その猫、取り扱い注意
本当は一人でユミを助けたかったけどこの状況だし手っ取り早いのは明らか。
チアキは他のクラスの女にお得意の色目を使う作戦でユミの居場所を探していた。
こういうときに、走ることしか出来ない自分が悔しかったりする。
「何落ち込んでるの?」
「落ち込んでねーし」
「言いたくないならいいけど顔に出てるよ」
「うぜぇ」
いつでもこいつは余裕そうで全く余裕のない俺とは正反対。
柔らかく微笑むチアキは男の俺から見ても色男だ。
二人で廊下を走ってるとチアキのファンがきーきーと甲高い声で騒ぐもんだから耳が未だに痛い。
耳を押さえたくなる衝動に駆けられるくらいうるさい。あ、うるさいどころじゃない。
「怖い顔」
「嫌みかよ」
「なにそれ…違うって。ユミちゃんの場所分かったから機嫌直して、ね?」
それを言い終わった瞬間、ランニングペースだったチアキは俺を抜かす勢いで走って来た。