その猫、取り扱い注意




不器用なイツキくん。


いつもいつも意地悪ばかりしてきたけど、あたしのこと大切にしてくれた。


チアキくんとは違う優しさで。


彼の話を聞いてる途中で涙は溢れて止まらなかった。


頬に伝う涙を拭う感触がした。


気づいたときには彼の胸の中にいて、声を上げて泣いた。



「不細工な顔」


「なんとでも言って」



涙でぐちゃぐちゃなあたしの顔はイツキくんの言う通り、不細工だ。


それでも今、幸せな気持ちで包まれている。



「イツキくん」


「なに」


「好きだよ」


「……喜びたいのにお前まだチアキと別れてないじゃん」



そうだ。あたしはちゃんとけじめをつけないといけない。


彼には一番幸せになってほしいと思った。


誰よりも優しい君

(待ってて、今すぐ答えを出すから)



< 87 / 105 >

この作品をシェア

pagetop