ヒールを履いた猫
 まるで人間の上等な女性といる気分になる白い猫──モモ。

 モモが人間だったらどうだろう? 

 時々想像してしまう時がある。

 自分の願望なのだろうなと思い、笑ってしまう。


 だから、あんな夢を見たのだろう。

 そうだ、夢の中で出てきたあのチョーカーを注文してみよう。

 懇意にしている洋裁店なら作ってくれるだろう。

 夢の中での間違いはしないように気を付けないと。

「だけど、ヒールは勘弁だな」

 将馬の表情は、まるで恋人に贈るプレゼントを考えるかのように上気していた。






 そんな将馬を見えなくなるまで見送ったモモは

 にゃーお

 と鳴く代わり

「こちらの将馬はイケてるにゃ」

と一人心地に呟くと、すくり、と後ろ足で立ってそのまま二足足歩行。

 ゴソゴソと寝台の下を探り出した物は

 ベルの付いた小さなヒール。




「さて、多重子さんが夕飯を持ってくるまで『お家』に戻るにゃ。あっちのショウマが心配してるだろうし」

 モモはそう言って前足を口に当てうふふと笑う。



 どれが現実で

 どれが幻想でなんか

 わりと曖昧なものです。


 そうですよね?

 モモ?
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