一億よりも、一秒よりも。
「私、正直言って貴方みたいな人好みじゃないの」
 
半年ほど前に連れて行かれた合コン。
俺は関係なく進んでいたはずなのに、急遽欠席者が出たとかで数合わせに採用されてしまった。
幹事の三原先輩には、プライベートはともかく仕事ではお世話になっていたので、しぶしぶ頷いて参加した。
 

元々そういう集まりが得意ではない。学生時代もほとんど飲み会をパスしてきた人間だ。
人づきあいが苦手というわけではないけれど、ああいう席では会話しないことが許されなくてテンションを同調させないといけないからしんどくて好きになれない。
 
生憎、そこで一匹狼を貫けるほど肝も座っていなかった。


「東雲、お前あの女頼むよ」
 
少し息苦しくなって、お手洗いに行くと適当な嘘をついて店の外に逃げた俺に、三原先輩はついてきた。
抜けだしたことを窘められるのかと思いきや、彼の口から出たのは意外な懇願だった。
 
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