一億よりも、一秒よりも。
そう、一体いつ自分は彼女を恋人だと認識したのだろうか。そしていつ恋に落ちたのだろうか。
 
そのほんの些細な時間を、俺は知らない。
 
だからこれが恋なのかどうなのかもわからない。
だけどふたりの関係はと尋ねられれば恋人だと答えるだろうし、紹介するときは彼女だと言うだろう。
 

あの日、ただ彼女がその靴を履いていただけで繋がった関係。
好みではないと宣言され、且つ自分もそうは思いながらも、連絡先を交換したふたり。
気持ち良かったのはその声で、テンポで、湿度で、曖昧に絡まっただけのこと。
今更再スタートを切るには、ちょっと大人になり過ぎてしまった関係。
 
< 51 / 84 >

この作品をシェア

pagetop