春をありがとう*2*
「曽我部 日向は記憶を取り戻しかけとる」
思ったとおり、翔太の目は大きく見開かれた。
「どういうこと…?」
「今朝職員室に行ったらね、先生が言いよったんよ。曽我部 日向が私の苗字のこととか聞いてきたって」
翔太の顔は複雑な顔になった。
「美春は…曽我部に思い出してほしい?」
「それが…分からんのよ。思い出してほしいけど、今の日向には今の日向で幸せがあると思うんよ。それに、家族やっておるはず」
そう、私にも再び家族ができて今が幸せなように、日向やって…。
「じゃあ、自然な流れに任せる?」
翔太はやわらかく微笑んだ。
その顔は、昔の日向によく似ていると思った。