春をありがとう*2*
「おばさん?誰が?」
「い…いや。その…」
今更慌てている翔太。
遅いし…。
「誰?」
逃げる翔太を追いかけようとしたその時…。
「おはよう、美春」
翔太じゃない声が聞こえた。
私はもちろん、翔太の動きも止まった。
だって、私を「美春」って呼んだ人は曽我部 日向だったから。
そりゃあ「美春」って呼んでって言ったけど、あまりにも自然だったから。
「日向…」
私の口からは勝手に「日向」って言葉が出ていた。
「曽我部…おまえ」
翔太は半分呆然としている。
「美春、放課後話がある。越智くんと一緒でいいから聞いてほしい」
そんな真剣な瞳で言われたら断れないし…。
私は声も出せずに頷いた。