春をありがとう*2*


「…日向」


私は1年以上前のあの日から、“日向”と呼ぶようになった。


「昨日意識戻ったらしいけん…入ろ?」


翔太に腕を引かれて病室に入る。

そこは、昔私が入院していた部屋。


「曽我部…久しぶり!」


翔太が声をかけると、ゆっくりこっちを向いた日向。


「ありがとう」


悲しそうに笑う日向。


「美春…思い出したよ。12年前のこと」


私は持っていた鞄を床に落とした。

< 75 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop