春をありがとう*2*
「着いたよ」
小澤と書かれた表札。
日向がこの家に入るのは12年ぶり。
「うん、覚えとる。ってか、一昨日思い出した」
少し辛そうに話した日向。
「じゃあ…入るよ?」
今日は太陽も未来も希美も家にいる。
でも敢えて3人には言ってない。
太陽は理解できるけど、未来と希美にとっては未知の人だから。
ガチャ…
開け慣れたはずのドアが重く感じた。
「…ただいま」
「おじゃまします」
本当は“ただいま”でも良いのにね。
私は何だか悲しく感じた。