抹茶な風に誘われて。~番外編集~
――あのオカマ……さては結託して、あたしをはめたわね!?
意味ありげな笑顔と言い、タイミングのよすぎる登場と言い、あれが決してハナコさんだけの企みとは思えないから。
頭を抱えてうずくまったあたしに、困りきった声が振ってくる。
「あの――? えっと、僕何か気に触ることでも――?」
「な、何にもしてないわよっ、別に!」
まさに逆ギレ。それ以外の何ものでもない怒りはどこへも向けようがなかったから、仕方なしに目の前の男にぶつけることにする。不幸な彼は、頭の回りにハテナをいっぱい飛ばしながらまとわりついてきた。
「ちょっと、本当にバス出ちゃうわよ? もう行けば?」
「で、でも――」
「いいから行きなって! 帰ってきたら――また店で会えるでしょうが」
最大限の譲歩――本心なんて隠し切った言葉――は、とても目を見ては言えなくて。いつもみたいに無愛想に済まそうとしたあたしは、ぐっと腕をつかまれて顔を上げる。
「さっきの……本心ですか?」
真剣な瞳は、心を真っ直ぐに射抜く。揺れる眼差しの奥には、彼の本気が見えた。
「さっきの……って何よ」
「だから――僕が他の女の人と結婚すればいい、っていうあれは――」
怖いくらいに見つめられて、腕を引こうとしても強い力が許してくれなくて、あたしは言葉を失ってしまう。まさか、こいつにこんな目ができるなんて――。
「もしも、本心なら……僕、もう店には行きません。男は引き際も重要だって思うから――でも、ほんの少しだけでも、そうじゃない気持ちが今日子さんにあるなら――」
囁かれた言葉。耳まで染まった真っ赤な顔。いつも小ばかにしてきたヘタレ男のはずなのに。
――こいつにこんなにドキドキするなんて、嘘、でしょ……?
意味ありげな笑顔と言い、タイミングのよすぎる登場と言い、あれが決してハナコさんだけの企みとは思えないから。
頭を抱えてうずくまったあたしに、困りきった声が振ってくる。
「あの――? えっと、僕何か気に触ることでも――?」
「な、何にもしてないわよっ、別に!」
まさに逆ギレ。それ以外の何ものでもない怒りはどこへも向けようがなかったから、仕方なしに目の前の男にぶつけることにする。不幸な彼は、頭の回りにハテナをいっぱい飛ばしながらまとわりついてきた。
「ちょっと、本当にバス出ちゃうわよ? もう行けば?」
「で、でも――」
「いいから行きなって! 帰ってきたら――また店で会えるでしょうが」
最大限の譲歩――本心なんて隠し切った言葉――は、とても目を見ては言えなくて。いつもみたいに無愛想に済まそうとしたあたしは、ぐっと腕をつかまれて顔を上げる。
「さっきの……本心ですか?」
真剣な瞳は、心を真っ直ぐに射抜く。揺れる眼差しの奥には、彼の本気が見えた。
「さっきの……って何よ」
「だから――僕が他の女の人と結婚すればいい、っていうあれは――」
怖いくらいに見つめられて、腕を引こうとしても強い力が許してくれなくて、あたしは言葉を失ってしまう。まさか、こいつにこんな目ができるなんて――。
「もしも、本心なら……僕、もう店には行きません。男は引き際も重要だって思うから――でも、ほんの少しだけでも、そうじゃない気持ちが今日子さんにあるなら――」
囁かれた言葉。耳まで染まった真っ赤な顔。いつも小ばかにしてきたヘタレ男のはずなのに。
――こいつにこんなにドキドキするなんて、嘘、でしょ……?