抹茶な風に誘われて。~番外編集~
Ep.4 バカとホストと妹と。(優月編)
初めて会った時から、一番嫌いなタイプの子だって思ってた。自分の直感――ううん、むしろ動物的本能は、ちゃんとあの匂いを嗅ぎ分けてた。
自分とは正反対な、一点の曇りもない透明な心。息苦しくなるくらいの純粋さが、やわらかな花のような笑顔から透けて見えてたから、あたしはわざと近寄ってみた。声をかけてみたんだ、中学からの知り合いの、咲を通して――。
「えっと――君が新田優月さん? こういう短期バイトは初めて?」
「いえ、何度か経験ありますから、任せてくださいっ!」
ニッコリ、はつらつ――きっとこういうオヤジ店長からしたら、たまらなくフレッシュな戦力に見えるだろう満面の笑みで、あたしは大嘘をついた。
お金なんてあの男に頼めばいくらだってくれるから、本当はバイトなんてやったことない。
中学の時には湯水のように使うことで、あいつの顔色を変えてみたいと思ったりしていたものだけど、結局全ては空しかっただけで――ほんの少しだけ大人になったあたしは、高校に入るのを機にそこまでの散財はしなくなったのだ。
たまに好きなブランドの新作を買ったり、芸能人が使ってる話題の化粧品を買ってみたりするぐらい十分毎月の小遣いで足りる。だけど、こうしてバイトなんて面倒くさそうなことをやってみようと思ったのには理由があった。
「優月ちゃんって言うんだあ、同い年い? よろしく~」
こんな日にバイトなんて、お互いついてないよねえ――馴れ馴れしい口調で早速笑いかけてくる見ず知らずの女の子。ちゃんとしたタイプの人間なら、きっと眉をひそめるだろう派手な化粧とロングの茶髪にも、あたしはもちろんひるむことなんてない。
どちらかといえば、気楽なくらいだ。変に生真面目な子と一緒に街頭で立ち尽くすよりよっぽどいい。もちろんそういう子たちもいたけれど、店長にもその辺はわかってるのか、それとも単なる偶然なのか――大人しげな二人は店の中でレジや包装担当。
そして、派手組のあたしとこの子は、店の外で呼びかけ担当に振り分けられていた。セント・バレンタインデー、と書かれた英語のスペルくらいなら、いくらオツムには自信のないあたしにだってわかる。その文字に込められた意味だって――。
自分とは正反対な、一点の曇りもない透明な心。息苦しくなるくらいの純粋さが、やわらかな花のような笑顔から透けて見えてたから、あたしはわざと近寄ってみた。声をかけてみたんだ、中学からの知り合いの、咲を通して――。
「えっと――君が新田優月さん? こういう短期バイトは初めて?」
「いえ、何度か経験ありますから、任せてくださいっ!」
ニッコリ、はつらつ――きっとこういうオヤジ店長からしたら、たまらなくフレッシュな戦力に見えるだろう満面の笑みで、あたしは大嘘をついた。
お金なんてあの男に頼めばいくらだってくれるから、本当はバイトなんてやったことない。
中学の時には湯水のように使うことで、あいつの顔色を変えてみたいと思ったりしていたものだけど、結局全ては空しかっただけで――ほんの少しだけ大人になったあたしは、高校に入るのを機にそこまでの散財はしなくなったのだ。
たまに好きなブランドの新作を買ったり、芸能人が使ってる話題の化粧品を買ってみたりするぐらい十分毎月の小遣いで足りる。だけど、こうしてバイトなんて面倒くさそうなことをやってみようと思ったのには理由があった。
「優月ちゃんって言うんだあ、同い年い? よろしく~」
こんな日にバイトなんて、お互いついてないよねえ――馴れ馴れしい口調で早速笑いかけてくる見ず知らずの女の子。ちゃんとしたタイプの人間なら、きっと眉をひそめるだろう派手な化粧とロングの茶髪にも、あたしはもちろんひるむことなんてない。
どちらかといえば、気楽なくらいだ。変に生真面目な子と一緒に街頭で立ち尽くすよりよっぽどいい。もちろんそういう子たちもいたけれど、店長にもその辺はわかってるのか、それとも単なる偶然なのか――大人しげな二人は店の中でレジや包装担当。
そして、派手組のあたしとこの子は、店の外で呼びかけ担当に振り分けられていた。セント・バレンタインデー、と書かれた英語のスペルくらいなら、いくらオツムには自信のないあたしにだってわかる。その文字に込められた意味だって――。