スパイク。
その時の私は図にのっていたのかもしれない。

それまで学年で1番速かったので負けるわけないだろうと高をくくっていた。


余裕をかまして隣のレーンの奴の顔をみた。

へぇ~随分ちっちゃいな(笑)
男のくせにチビとかありえないっしょ~。
うわこっち見た!

「見てんじゃね―よ。」

カチーン☆
言葉遣い悪ッ!
なんで見た目がチャーミングなのにこんな無愛想なの!?
ギャップありすぎでしょ!
まぢありえない!

「はぁ?誰もあんたなんか見てないし。」

「…あっそ。」

ムカつく―!!!
何こいつ!ウザ―い。
まるで私が悪いみたいじゃん。
こーゆー自意識過剰は早いうちに叩きのめしとかなきゃ。

「いちについて…」



「よーい…」


バンッ!!!


勢いよく飛び出した。
最初は前屈みで…
後半起き上がりトップスピードにのる。
いつもはスタートして4、5mもすればあっというまに差がつく。

だけどその日は違った。

スタートをミスった訳でもなければトップスピードにのれなかった訳でもない。



私はこの時初めて負けた。


胸にぽっかり穴があいたようだった。


呆然と立ち尽くす私に
あいつが言った一言。


「なんだ。たいしたことねぇじゃん。」


私は現実に引き戻された。






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