ハレゾラ
「今はここまで。ほんとはすぐにでも押し倒しちゃいたいけど、真っ最中に
仲居さんが片付けにきたらマズイでしょ」
「真っ最中って……」
「さっ、咲さんの気持ちが変わっちゃう前に食べ終えなきゃ」
そんなことを言って、ニコニコしながら自分の席に戻る彼を見ていたら、
(私、もしかしたら間違った事口走った?)
今更ながらに失敗とも後悔とも、何とも複雑な気持ちになってしまった私。
はぁーと大きなため息をついたが、まったく気付く様子もなく食べ続ける彼。
さっき私にあんな情熱的な言葉を言ったのが嘘だったかのように、少年の顔をしている。
不覚にも(可愛い…)と思ってしまった。
まだ夜は長い。少し気持ちを落ち着けて、今はこの目の前に広がる豪華な食事に
集中することにした。