ハレゾラ
でも今回は希美のぬくもりがそばにあったからか、思ったよりも早く落ち着く。
少し冷えた紅茶を一口飲むと、今日あった出来事を話した。


「そっか……。まあ目の前でそのシーンを見れば、ショック大きいかもね」


「うん……」


「でも、翔平くん、一緒にいた人のこと彼女って言った?」


「言う訳ないじゃん。そんな自分が不利になること」


希美が何を言いたいのか分からなかった。
彼があの場で何を言おうと、全部が言い訳に聞こえたに決まっている。
それに……彼の、私がいることを知ったときの顔が頭から離れない。しまったっ
と言わんばかりの顔をしていた。それが何よりの証拠だ。


「でもさぁ。ずっと何も話さないわけにいかないでしょ? 彼の言い分も聞いて
 あげれば?」


「今は無理。会いたくない」


「はぁ……。頑固だからなぁ、咲は」


希美はそう言って、困ったように笑った。
30過ぎの女が、そんなことにこだわるのはおかしいかもしれない。でも彼の
ことを、彼の愛情を信じていたから……。
このまま終わってしまいたいと思っているわけではないけれど、今はまだ何も
考えてたくなかった。
そして私はそのままソファーにもたれかかり、静かに眠りについた。
 
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