ハレゾラ

リビングの手前で大きく深呼吸をする。すると、たっぷりの酸素を吸い込んだ
身体は、一気にやる気が漲った。


「おはようございますっ」

「あっ、咲ちゃん、おはよう」

キッチンから顔を出して、徹さんが声を掛けてくれる。
ダイニングテーブルの上には溢れんばかりの料理が並んでいた。その光景に目を
奪われた。


「すっごーいっ! これ、徹さんが全部作ったの?」


まるで子供のようにはしゃぎ回る私に、不機嫌そうな声が呼びかけた。


「ちょっと咲。全部徹が作ったんじゃないんだけどっ!」


「えぇ~。それはちょっと信じがたいんだけど……」


希美は料理が全くできないのだ。知りあってから十数年。一回だって、まともな
料理を作ったことがない。だから今、このダイニングテーブルにある料理は希美
には絶対に無理。だとすれば、作ったのは徹さんしかいない。


「このパン焼いたの私。野菜ををドレッシングで和えたの私っ」


「それ、作ったって言わないし!」


徹さんはそんな私達のやり取りを、キッチンからカウンター越しに見て微笑んで
いた。
 
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