ハレゾラ
昨晩は全く食欲がなく、もう一生食べなくてもいい……って思うくらい生きる気力を無くしていた。でも現金なもので、こんな美味しそうな料理を目の前に出さ
れると一生食べないのは無理……。
徹さんが作った美味しい料理を、あっという間にぺろっと食べてしまった。
「作った甲斐があるな」
って、徹さんは喜んでくれたけど、希美は呆れ顔。
最後に、徹さんが淹れてくれたコーヒーを飲んでいると、希美がおもむろに話し
だした。
「で、今日はどうするつもりなの?」
そうだった……。美味しい食事を堪能して、そのことを忘れていた。いや……
意識的にに考えないようにしていた。
「携帯を置いてきちゃったし……。彼も昨日の今日では会いに来ないんじゃな
い……かなぁ」
そうだ。昨日だって私を追いかけてきてはくれなかった。そんな彼が今日会いに
来るとは考えられない。
「希美は今日、用事あるの?」
「特にはないけど……」
「けど?」
その後、何を言われるか、なんとなく分かってしまった。
「帰ったほうがいいんじゃない? とか言うんだよね」
「そうだね」