ハレゾラ
やっぱり……。はぁ~っと溜息をつき、わざと大きく頭を項垂れてみせる。
しかし希美は、何もかもお見通しと言うように少し鼻で笑って見せた。
「小芝居しちゃって。別に私はいいんだよ、咲と一緒にいても。でもさ、咲が
今一緒にいなきゃいけないのは私じゃなくて翔平くんでしょ? 違う?」
「分かってるっ。頭では分かってるんだけど、心が嫌って言ってるの……」
「まったく……二十歳の乙女か。咲は傷つきたくないだけなんだよっ」
「分かったようなこと言ってっ!!! 希美、親友でしょ。優しくないっ!」
「今、優しくしたってその場しのぎにしかならないの。分かる?」
「分かった。帰ればいいんでしょ、帰ればっ!」
あぁー!! もう腹が立つ。
私は急いで部屋に戻り、カバンを持つと玄関に向かった。
希美はリビングから出てこない。その代わり、徹さんが走ってきてくれた。
「咲ちゃん、ここにいていいんだよ」
「なんか、私のせいで朝から変な雰囲気になってしまって……ごめんなさい」
そう言うと、徹さんの顔も見ないまま、その場から走り去った。