ハレゾラ
パンケーキが運ばれてくると、それにたっぷりのメイプルシロップを垂らす。
よく染みたそれを食べると、口の中に広がってゆく甘さが私の心を穏やかにしてくれた。
「美味しい……」
思わず声が出る。
さっきまで頑なに反抗心でいっぱいだった気持ちが、少しずつ解れていった。
(希美に悪いことしちゃった……)
彼女に全部見透かされてるのが、悔しかった。
私だって、そんなに馬鹿じゃない。彼とちゃんと話した方がいいのは分かって
る。いつまでも先延ばしにしているのは、得策じゃないってことも。
でも、彼を本気で好きになって、本気で愛してしまった今となっては、現実を
知るのはあまりにも怖すぎた。
かと言って、「一緒にいたのは彼女じゃない」と言われて、もう一度彼を信用
することができるだろうか。
不安だった。
彼を手放したくないから、とても不安だった