ハレゾラ
部屋に戻った私は、携帯を見つけると希美にメールを送る。
 
『さっきは、ごめん』

すぐに希美からも返事が戻ってきた。

『咲が思うようにやってみ。それで駄目だったら、また一緒に飲んであげる』

心の中で希美に ーありがとうー と呟いた。


彼のことを嫌いになった訳ではないが、顔を合わせれば私はきっと素直になれ
ない。一度少し距離を置こうと思った。それで何かがすぐに変わるわけではな
いのだけれど……。

落ち着いて考えてみれば、あの彼が二股をかけるとは到底思えない。
何か訳があったのだろうか……。
だとしても、やっぱり彼が他の女性と一緒にいる姿は見たくなかった。
何かしていないと、あの光景ばかり頭に浮かんできてしまい、なんとも言えない
気分になってしまう。


「私って、結構なヤキモチ焼きなんだ」


苦笑しながら、ベッドに丸まった。
今すぐには無理だが、ちゃんと彼の話を聞くために、いつかは連絡を取らなけれ
ばいけない。
でもそれまで彼は待っていてくれるだろうか……。
時間が経つに連れ、不安ばかりが募っていった。
 
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