ハレゾラ
知らなかった。長い間そんな気持ちでいてくれてたなんて……。
叱るのも褒めるのも真剣で、その行為にいつも甘えていた。恋愛の相談に乗って
もらったことだってある。
私はただ単に後輩だから、部下だから、親切にしてくれているんだとばかり思っ
ていた。申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
坂牧の顔を見ていられなくなって俯いた。
「おいおい。花田、お前が俯いてどうする」
そう笑ってはいるが、やはりその声は、どことなく寂しそうだった。
「翔平。もし今後お前が、花田を泣かしたり不安にさせるようなことがあれば、
俺は遠慮なく花田を奪う。それだけは覚えとけよ。分かったな」
「分かった、覚えてはおくよ。でももう二度と咲さんにそんな思いはさせない。
それに兄貴には悪いけど……」
そう途中まで言って私の肩を抱き、グッと引き寄せる。
私は驚いて顔を上げ、彼の顔を見た。
あ……ヤバいかも。この何かを企んでる笑顔。
そう思った瞬間……。
彼の熱い唇が、私の唇を奪った。