ハレゾラ
「びっくりした。いつもの口調と全然違うんだもん」
「兄貴に……ヤキモチ焼いた」
「何で? 私はチーフ……お兄さんに、ごめんなさいってちゃんと言ったよ」
どこにヤキモチを焼くと言う理由があるのだろう……。
私と坂牧は同じ会社の社員。今更辞めるわけにもいかない。それさえも嫌と言う
のだろうか。
な、なんだか彼がすごく可愛く感じて、愛おしくなってきた。
急に彼が今どんな顔をしているのか見たくなって、抱きしめている手を優しく
摩った。すると私を抱きしめている腕の力が少しだけ緩まる。その隙にクルッと
身体を反転させて、彼を玄関のドアに押し付けた。
「わあぁっ!? 何するの、咲さんっ」
私の突拍子のない行動に驚き、顔を近づけられ気恥ずかしいのか、頬をわずかに
赤く染めている。その頬に手を滑らせ、指でスルスルと撫でた。
やっぱり若いだけあって張りもあるし、すべすべしてて気持ちがいい。
「なんか僕、カッコ悪いんだけど……」
「そうかなぁ? 私は今の翔平くんが好き……なんだけど」
そう。これが本来の彼なんだから。
照れくさいのか俯いて私の肩にもたれ掛かる。
いつもより小さく見えるその身体を優しく抱きしめ、片手で頭を撫でた。