ハレゾラ
「でもさっきまでの、普段とキャラが全く違う俺様な翔平くんも……たまには
いいかも」
彼は、「えっ?ほんとに?」っと嬉しそうに顔を上げ、人差し指をピッと立たせ
ると、今度は彼が私の頬をその指で上へ下へと行き来させ撫で回した。
「へぇ、咲さんにそっちの趣味があるなんて知らなかった。もう“おしおき”
は止めてあげようと思ったけど……」
「け、けど?」
「咲さんにお願いされたら、頑張るしかないでしょっ!」
あっ、マズイ事言ったかも……。彼が目が不敵に弧を描き、私の顎に手をかけ
た。
いえいえ、そんな趣味はございません。お願いなんかしてないし……。
「頑張らなくていいっ!!」
今更そんなことを言っても彼に通用するはずもなくて……。
……形勢逆転……
あっという間に二人の立ち位置が変わり、今度は私が玄関のドアに押し付けられ
てしまっていた。
「咲さん。僕に愛される覚悟をしてね。めちゃくちゃにしてあげる」
彼の初めて見せる、その艶かしくて妖しい顔に、目が釘つけになってしまう。
恐怖にも似た感覚が、私の身体を支配し始めた。
もうこの状況から逃れることはできそうもない。
諦めてそっと目を瞑ると、彼がクスっと笑ったような気がした。
指先で唇の輪郭をなぞると背中がゾクッと震え、次の瞬間、彼の熱い唇が私の唇を奪っていた。