ハレゾラ

それからしばらくは、何とか気持ちをコントロールして仕事に集中していた。
しかしある朝、仕事へ行く準備をしている途中でその不安が私の体全体を包み込
んでしまう。
私の心と身体は、こんな忙しい最中だと言うのに会社を無断欠勤させ、一人、あ
の思い出の海へと私を向かわせてしまった。

電車を乗り継ぎ、最寄り駅からバスに乗って、5時間ほどで目的地に着いた。
カバンの中からは、さっきからうるさいほど、電話やメールの着信を知らせる音
が鳴り響いている。
きっと坂牧チーフか藤原くん。あるいは希美あたりからだろう。
今まで遅刻はおろか、体調不良で休んだことさえない私が、無断欠勤したのだか
ら当然のことで。それもこの年末商戦、真っ只中のこんな時期に……。

もう身体が限界だった。疲れやストレスだったらまだ何とか我慢ができただろう
と思う。でも情けないことに、彼と会えない、一緒にいられない、そんな思いが
身体に悲鳴を上げさせてしまった。


「寒い……」


前に来た時は、彼と二人。

【永遠に離れず】

そう願い南京錠を掛け、想いを伝え合ってからこの海へ来た。
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