ハレゾラ
「はっ…くしゅんっ!」
寒い……。長い時間ここにいたからか、身体がかなり冷えていた。
すぐ隣から「しょうがないなぁ」と声が聞こえると、両腕がすっと伸びてきて
私を包み込んでくれた。
「こんなに身体が冷えるまで、何してんだよ。まったく……」
抱きしめ方は優しいのに、その言葉はまだ怒っているような口ぶりだ。
そりゃそうだよね。彼も今はとても忙しい時なのに、ここにいるって言うこと
は……。仕事、途中で抜けてきてしまった訳だよね。
「迷惑かけて、本当にごめんなさい。こんな情けない30過ぎた女のことなん
かより仕事……っ!?」
(パシッ!!!)
話してる途中で、彼に頬をおもいっきりひっぱたかれてしまった。
あまりにも突然のことで、ひっぱたかれた頬を押さえ呆然としていると、彼は
とても悲しそうな目をして佇んでいた。
「咲さん、もうそれやめない? 前にも言ったと思うけど、僕は咲さんの歳の
ことは気にしてない。でもね、年下ってことで負けたくないから、僕だって
これでも一応頑張ってるつもりなんだ。歳の差はどうやったって埋められな
いのに、そんなことばかり言うなんて……」
そこまで言うと彼は俯き、ぎゅっと握っている手と肩をぶるぶると震わせた。