ハレゾラ
「や、やっぱりお前、面白い! なぁ、翔平じゃなくて俺にしないか?」
「はぁ!? 冗談でもおもしろくないんですけど……」
そう言ったのに、坂牧は腕を伸ばし私の肩を抱いた。
「チーフ、それセクハラ……」
「ここ会社じゃないし、これくらいはいいじゃないか。なぁ?」
私の肩を抱きながら何かを楽しむように、体を震わせてクツクツと笑っている。
まったく……。坂牧が彼のお兄さんじゃなかったら、大声を出してるところだ。
しかし、私じゃない誰かが、どこからか大声を出して叫ぶ。
「兄貴ーっ!! 咲さんから離れろーーっ!!!」
え? 嘘? 翔平くん?
大声をがする方を見てみれば、ものすごいスピードでこっちに向かって走ってく
る彼の姿が見えた。
はぁ……そういう事か。だから坂牧は私の肩を抱きながら笑っていたんだ。意地
悪で彼に見せつけるために……。
どいつもこいつも、はた迷惑な兄弟だよ……まったく。
坂牧は気が済んだのか、すっと立ち上がって片手を上げる。
「じゃ、俺行くわ。ここにずっといたら、あいつに何されるか分からないから
な。楽しい休日をっ!」
そう言うと、さっさとこの場から去っていった。