ハレゾラ
職場について事務所に向かう。自分が一番出勤だろうと思っていたが、驚くこと
に坂牧がいた。もう仕事を始めているみたいだ。
「チーフ、おはようございます」
「おうっ、花田おはよう。今朝も早くから悪いな」
自分だってもう仕事してるのに、何言ってるんだか……。相変わらず、お人好し
な人だ。
今日はクリスマスイブ。忙しさもピークを迎える。ホワイトボードに貼ってある
今日の担当一覧を見ても、その忙しさが尋常でないことを嫌でも教えてくれる。
頭がクラクラしてきた。
「はぁっ……くしゅんっ!」
「なんだ、風邪でも引いたか?」
「いえいえ、大丈夫です」
身体が少しブルッとしたが、これはこの後の仕事の恐怖からの身震いだろうと、
敢えて気にすることもなかった。
坂牧と一緒にケーキやオードブルの予約表をチェックし始めると、続々と社員が
出勤してくる。全員が揃うと、坂牧が威勢のいい声をかけた。
「今日が正念場だ。気合入れていけよっ!!」
「「はいっ!!!」」
その一声で、一人一人に活気が満ちていくのが分かる。さすがは坂牧だ。
そしてそれぞれが自分の持ち場へと、一斉に散らばっていった。