ハレゾラ
私もあっちこっちに走り回りながら、的確に指示を与えていく。そのせいか、午
前中の仕事も思っていたよりかなり順調に片付いていった。
お昼を取る暇こそ無かったが、それはどの社員も同じ。交代で少しずつ休憩を取
りながら、自分に課せられた仕事をこなしていく。
私も少し休もうと休憩室に入ると、それまで仕事に集中していて気づかなかった
自分の異変に気がついた。
(あれ? 頭痛い? それに身体が熱っぽいような……)
急にフラっとして、近くにあった簡易的なソファーになだれ込むように腰掛け
た。肘掛けに身体を預けて目を閉じていると、誰かが近づく足音が聞こえてくる
のが分かった。薄く目を開け、それが誰なのか確認する。
「チーフ?」
こんな自分を見られたくなくて身体を起こそうとしたが、思ったように動いてく
れず、諦めてそのまま目を閉じていることにした。
「あれ、花田か? どうした?」
心配そうに聞いてくる坂牧の顔も見ずに、首だけを横に二三回振った。
本当はもう、首を動かすのも辛い。でも今、それがバレるのは嫌だった。
「しばらくこうしていれば良くなるから」と坂牧にそれとなく言うと、いきなり
額に手を当てられた。
「な、何するんですかっ!?」
「お前、嘘つくの下手すぎ。かなり調子悪いんだろ?」
さすがは彼のお兄さん。血は争えないなぁ……。なんて呑気に思っていたら、軽
く頭を叩かれた。