ハレゾラ
彼の有無も言わせないような言葉に、私はすんなりと負けてしまった。きっとまだ、唇に彼の指が押し当てられているのもその原因だろう。彼の瞳を見つめなおしコクンとひとつ頷いた。


「良かった。それじゃあこれからよろしくね、咲さん」


そう言って唇から指を離し、私の心をドキドキさせたま元の場所に戻った。
なんだか唇が寂しい……。こんな事を思ってしまう自分に驚いてしまう。


私、どうしちゃったんだろう……。


魔法にでもかかったのか、彼の無邪気だけど強引な態度に翻弄されっぱなしだ。
 

その後お酒を飲みながら美味しい食事をし、話もたくさんした……と思う。
少し前の出来事が頭から離れずドキドキが収まらない私は、いろいろな感覚がどこかへ飛んでいってしまっているようだった。


そんな私でもひとつだけ覚えていることがある。それは終始、彼がとても嬉しそうに満面の笑顔だったこと。その笑顔に引き寄せられるかのように私も笑顔になっていた。
 
 
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