ハレゾラ


いつもの私は、低血圧のわりに目覚めはすこぶる良い。
なのに今日は布団の中の居心地がとても良すぎて、なかなか起きられそうに
なかった。
薄く目を開けると、そこには可愛い彼の寝顔がある。


(起きたくない原因は、これだよね)


いい歳して、顔がニヤけてしまう。久しぶりの幸福感? とでもいう感じだ
ろうか。


「翔平……」


まだ寝てるからいいか……と、『くん』を付けないで呼びながら、頬を擦って
みた。よく寝ているのか、まったく反応なし。ちょっとだけ悪戯心に火が点い
てしまう。

両手で頬を挟み、そっと顔を近づけチュッとキスしてみる。それでも満足せず
今度は少しはだけている胸に唇を這わせてみた。すると彼が、微かに動いた。
その反応で、我に返る。


(何やってんだろう、私……)


頭を振って煩悩を振り払うと、朝食の準備をしようと彼を起こさないように
起き……上がれないんですけどっ!?
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