ハレゾラ
「あれ?どうしちゃったの?咲さん?」
私の両手を顔から退けようとする。
首を左右に振ってイヤイヤをしても止めてはくれず、顔から離されてしまった。
硬く目を瞑っていると、瞼に優しく口づけてきた。
「目、開けて」
彼の、声は優しいけれど命令するような物言いに、まるで魔法にでもかかった
かのように、自然に目を開く。
目の前に、彼のいつもの笑顔がひろがっている。大好きな笑顔だ。
少し気持ちが落ち着いてきた。
「いつから起きてたの?」
「う~ん、咲さんが起きる30分ぐらい前かな。ずっと咲さんの寝顔見てた」
30分……。よくもまぁどうして、そんな恥ずかしいセリフを、そんな笑顔で
サラッと言っちゃうのかなぁ。
「はぁ……。じゃあ、私が起きそうになったから、狸寝入りしたわけだ」
「結果的にはそう言うことになるかな。でも、咲さんが起きたら僕もすぐに
起きるつもりだったんだよ。これは本当に本当。でも、起きられなくなっ
ちゃった。咲さん、嬉しいことしてくれるんだもん」
だもん……って。これが年下の特権ですか!? 怒るに怒れないじゃない。
まぁ、悪戯してしまった私もいけないんだけど……。