ハレゾラ
膨らんでゆく気持ち
彼の車の助手席に乗り込むと、はぁ~と溜息が出てしまった。
「何? どうして溜息?」
車のエンジンをかけながら、彼が少しだけムッとしているのが分かる。
「え? えっと……ごめん。なんでもない」
勝手に出てしまった事だけに、何て答えたらいいのか分からない。
「ドライブに行きたくなくなった、とか?」
「そんなこと、あるわけないっ!」
自分でもビックリするほど大きな声で叫んでしまった。
これじゃあ、ドライブに行きたくて行きたくてしょうがないって感じだ。
実際、ものすごく行きたいんだけど……。
「そっかそっか」
嬉しそうにニヤニヤ笑いながら、私の顔を覗き込む。
「な、なに?」
「最初から飛ばしすぎちゃったかな……咲さん、ごめんね。お詫び」
ちゅっと音を立てて唇が触れた。
そして、何もなかったかのように車を発進させる。
飛ばしすぎたおわびにキスって……。お詫びになってないんだけどっ!
と思いながらも顔は自然とにやけてしまう私。
(まったく、私って……)