ハレゾラ
えっ?それって……。
動揺し、心臓がきゅんっと音を立てた。
でも心は私を勝手に動かす。彼から目を離さぬまま、コクンと頷いてしまった。
ホッとしたのか、彼が小さく息を吐き、緊張して硬く握っていた手を緩めた。
「どこかで食事してから帰ろう」
「うん……」
車に戻って彼がエンジンをかけようとした。……が、カチカチ音がするだけで
エンジンがかからない。
「ちょっと待ってて」
そう言うと、車から出てボンネットを開けて調べだした。しばらくして戻って
くると、彼が困ったような顔をした。
「バッテリーじゃないと思うんだ、変えたばかりだし。だとしたら故障……」
「えぇっ故障! 帰れないの?」
「たぶん」
たぶん……。こんなとこで帰れなくなるなんて。1人でパニックになって
る私をよそに、彼はテキパキと何件か連絡をし始め、あっという間にこの後の
予定を決めてしまった。