ハレゾラ

「こちらのお部屋になります」


急だったわりに、かなり広めの素敵な部屋だった。奥の縁側部分からは海が
一望できる。その縁側からもう一間あるのか、扉があった。どんな部屋か気に
なりそっと開けてみると……。
結構な人数が入れそうな露天風呂。素敵なチェアーもおいてあって、ゆったり
くつろげるスペースもある。

今流行の『露天風呂付客室』ってやつだ。

慌てて彼の元まで行き口をパクパクさせていると、ポンッと頭に手をのせられた。


「気に入ってくれた? ここの旅館、前に雑誌で見ていつか来たいなぁって
 思ってたんだ。さっき思い出してさぁ。連絡してみたら、この部屋空いて
 るって言うから」


それを聞いていた女将さんが、嬉しそうにお茶を出してくれた。


「とても人気のお部屋なので空いてる日はほとんど無いんですよ。でも空いて
 いて良かった。お客様に泊まっていただけて、私も嬉しいです」


そりゃあ私だって嬉しい。こんな部屋に泊まれるなんて夢のようだ。
でも、でも、こう言う部屋ってお値段が……。
少し涙目になって彼を見ていたら、大丈夫と言うかのように頷いてくれた。
< 90 / 237 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop