ハレゾラ
「こちらのお部屋になります」
急だったわりに、かなり広めの素敵な部屋だった。奥の縁側部分からは海が
一望できる。その縁側からもう一間あるのか、扉があった。どんな部屋か気に
なりそっと開けてみると……。
結構な人数が入れそうな露天風呂。素敵なチェアーもおいてあって、ゆったり
くつろげるスペースもある。
今流行の『露天風呂付客室』ってやつだ。
慌てて彼の元まで行き口をパクパクさせていると、ポンッと頭に手をのせられた。
「気に入ってくれた? ここの旅館、前に雑誌で見ていつか来たいなぁって
思ってたんだ。さっき思い出してさぁ。連絡してみたら、この部屋空いて
るって言うから」
それを聞いていた女将さんが、嬉しそうにお茶を出してくれた。
「とても人気のお部屋なので空いてる日はほとんど無いんですよ。でも空いて
いて良かった。お客様に泊まっていただけて、私も嬉しいです」
そりゃあ私だって嬉しい。こんな部屋に泊まれるなんて夢のようだ。
でも、でも、こう言う部屋ってお値段が……。
少し涙目になって彼を見ていたら、大丈夫と言うかのように頷いてくれた。