ハレゾラ
そう言って、悲しそうに俯いてしまった。
あれ? 私が悪い? ちょっと大人気なかった?
彼の傍までちょこちょこと膝歩きしていき、横に座って様子を窺った。
すると彼はニヤッと不屈な笑みを湛えてこちらを向き、私の顔を両手で挟み
込んだ。
「もう咲さんは、すぐに騙されちゃうんだから。そんなんじゃ僕の思うつぼ
だねっ!」
やられたーーーっ。そうだ、今日の彼は小悪魔だった……。
すっかり彼のペースにハマッてしまっている。
でも……。なんか面白くなってきた。勝手に笑い声が漏れてしまう。
「翔平くん、面白いかも」
「そう? でも今頃気付くなんて遅い! 僕はいつだって咲さんに笑ってて
ほしくて頑張ってるんだから」
そっかぁ、頑張ってくれてるんだ。私の為に……。
じゃあ私も頑張らないといけないね。
両頬を彼の手に挟まれたまま、目を閉じてみた。
彼の手が一瞬ビクッと動いた。そしてゆっくりと、彼の気配が近づいてきた。