ハレゾラ

「ビックリした。嬉し泣き……か。だったら僕の胸でもっと泣いていいよ」


では遠慮なく……。だって泣かせたのは翔平くん、あなただから……。


旅館だからと声は堪えて、彼の胸でしこたま泣かせてもらった。
抱きしめている彼が、とても喜んでいるように感じた。

だってちょっと鼻歌なんか歌ってるんだもん。年下なのに余裕あるなぁ~。

でもそんな彼の鼻歌を聴いていたら、涙も落ち着き始め、私にも平常心が
戻ってきた。
彼の胸を両手で軽く押し、少しだけ身体を離して彼の顔を見上げる。


「目、真っ赤。ウサギみたいで可愛い」


「バカ……」


「あ~あ~、そんな事言っちゃうんだ。見てよ僕の服。咲さんの涙と鼻水で
 べちょべちょ」


「鼻水なんてつけてないっ! ……涙は、ごめん」


「服通り越して、身体まで濡れちゃった」


「え?ほんとに?」
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