Sugar × Spice Ⅱ〜恋人は年下幼馴染〜
「大人だからとか、社会人だからとか、年上だからとか、
そういうの、通用しないのが当たり前なのよ。
しっかりしなきゃと思うなら、目を背けないで。
逃げずに、真っ向からぶつかっていきなさいよ」
「ミカ…」
そう言ってミカは先に帰っていった。
ミカの言葉が、グサリと刺ささったみたいに胸が痛い。
これが、当たり前…?
こんな苦しくて、ぐちゃぐちゃで、前よりもっと自分のことを嫌いになりそうな…
それが“恋”なの?
人を好きになるってもっと、楽しくて幸せな気持ちになるものなんじゃないの?
こんな…私が私でなくなったみたいな…
こんな、弱い自分を突きつけられただけで…
…なのに、それでも浮かぶ涼の顔。
“咲”
その声でもう一度、呼んで欲しい。
そしたら私、今度こそは……
---------
-----------……
重い足取りで会社を後にする。
家に帰ると、家の前に優兄ちゃんの姿があった。
「優兄ちゃん!」
「おぉ、咲」
今まさに家に入ろうとした優兄ちゃんを呼び止めて、私は慌てて駆け寄った。
「どうしたの?帰って来て」
「うん、ちょっと母さんに用事あってな。
咲は今帰りか?遅いんだな」
「うん、まぁ今日はたまたまね」
「どうした?元気ないな、会社で何かあったのか?」
私は驚いて優兄ちゃんを見た。
すごい。さすが優兄ちゃん…。
「へへ、ちょっと久々にミスしちゃって」
私は笑って答えた。
「そうか、受付の仕事も大変だよな。頑張ってるんだな、咲」
「そんな、優兄ちゃんに比べたら全然…」
その途端、涙が溢れ出した。