欲情に足枷
EVEN


「して」


斜め前に座る彼が唐突に言った。いや、命令してきた。


私はその命令を視線だけで一蹴すると、再びテレビへ顔を向ける。


いつもの日曜日。変わり映えしない彼の部屋。夜9時になるとテレビを彩るのは洋画の再放送と決まっていた。


今日はSFの気分だったのに、ラブストーリーなんて気分が落ちる。


きっとそれは彼も同じなのだろう。指先でテーブルを2回叩き、私の視線を誘導した彼は威圧感を含む瞳を細めた。


「舐めて」


テレビから漏れるベッドシーンの嬌声は、彼の命令を助長するかのように激しさを増している。


映画に飽きたなら寝ていればいいのに。


口にするのも面倒で、テーブルの下に伸ばしていた両脚の1本を彼の秘部へ近付けた。


「また足かよ」


もう山にさせといて文句を言うな。これでも譲歩してるというのに、つくづく自分中心の男だ。
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