Black Coffee.
「 待たせてしまってごめんなさい 」
日曜日。
不安と緊張、それから期待とで
全く眠れなかったあたしは
準備に手間取って五分ほど
遅刻して駅前に着いた。
「 全然大丈夫ですよ 」
「 本当にごめんなさい 」
「 いえいえ、それより行きましょう? 」
走ったせいか、巻いた髪が少し
崩れていて、それに気付いた彼は
撫でながら直してくれた。
「 映画は三時からなんですけど、
それまで何処か行きますか? 」
「 あ、あたし新しくできた
本屋さんに行きたいです 」
「 それ、俺も思ってました 」
”まずはそこ行きましょうか”と
彼が小さく笑って、あたしは頷いた。