Black Coffee.
男の子はあまり本は読まないんだと
思っていたからか、こうやって
楓くんと本の話をするのは楽しい。
それに、新鮮。
「 菜緒さん、そっちは大学です 」
「 へ? 」
「 今日は”違う”んですから、
ここで降りちゃだめですよ 」
「 あ、・・・・そっか 」
・・・・今日は、違うんだ。
見慣れた私服ではあるけど、
普段より数倍かっこよく見えるのは
今日は、バイトや大学がないからなのか。
「 菜緒さん? 」
「 ん? 」
「 顔、赤いですよ 」
そう言って、伸びてきた彼の手。
少し混んでいる日曜朝の電車。
ドキン、と高鳴った胸を押さえて
あたしは一歩後ろへ下がった。