Black Coffee.
─────────ガタンッ・・・
「 菜緒さん、危ないですよ 」
顔の横に両手をついた彼が
苦笑して、”大丈夫ですか?”と
至近距離であたしを見下ろした。
「 ん、・・・大丈夫、です 」
「 それはよかったです 」
ドアに背中をくっつけて、
少し顔を上げれば触れてしまうほどに
近いところに居る彼。
一歩下がると同時に吊革から手を離し、
その瞬間電車が大きく揺れた。
倒れそうになったあたしの肩を抱いて
それからトンッと背中にあたったのは
ドアで、
「 これなら転ばないですよ 」
そう言って笑う彼は、
本当にどうしようもない天然だと思った。