Black Coffee.
「 菜緒さん、切符! 」
「 へ? 」
「 定期じゃ無理ですよ 」
ケラケラと笑う彼から視線を
逸らし、駅の名前を見て
手に持っていた定期をさっと
鞄にしまった。
「 今日の菜緒さんはいつもより
増してドジ、というか・・・ 」
笑いながらあたしの頭を
何度か撫でて、しまった
定期の代わりに財布を取り出すと
頭に乗っかっていた彼の手が
あたしの手に触れた。
「 いいですよ、このくらい
俺に出させてください 」
「 え? 」
未だに少し笑いながらも、
彼はポケットから財布を出して
あたしの分も支払ってくれた。