Black Coffee.
メニューを閉じてニコニコと
楽しそうにあたしを見ている
楓くんに少し心臓が高鳴ったりして、
誤魔化すように急いで決めようと
再度メニューへと視線を落とした。
「 急がなくてもいいですよ。
映画まで時間はまだありますし 」
「 ・・・でも 」
「 女の子はそういうところが
可愛いんですよね 」
”見ていて楽しいんです”と
笑った彼。
あぁ、もう。
朝からずっと調子を狂わされてばかり。
あたしは彼のどうしようもないところが
好きで仕方ない。
天然で、口がうまいところ。
本当に思ったことをそのまま
言っているんだろうな、なんて思うと
自惚れそうになるから、そこはあまり
深く考えない。
野菜の入った和風のパスタを選んで
お互い注文して、それからお店を
出るまではやっぱり本の話をしていた。