Black Coffee.
「 そろそろ出ますか 」
「 そうですね。映画館まで
どのくらいかかるんでしょう? 」
「 ここから結構近いですよ 」
何でこんなにこの辺に詳しいんだろう。
首を傾げながら、あたしは少し
メイクを直したくて出る前に
トイレに行った。
流れる水をボーっと眺めながら
いつの間にか、緊張が解れていることに
気付いて、やっぱり楓くんは
すごいな、なんて思いながら
トイレを出た。
「 さ、行きましょうか 」
「 え?あれ? 」
「 実は昨日映画のチケット
買っておいたんですよ 」
「 え!? 」
お会計まだなのに、と戸惑うあたしの
腕をくいっと引っ張る彼について
あたしはお店の外に出てしまった。