Black Coffee.
「 ・・・お会計 」
「 大丈夫です 」
「 そんな、悪いです・・! 」
あたしも楓くんも同い年で、
大学生なのに。と言えば
”これくらいさせてください”と
彼は笑って、
「 何かお礼させてくださいね! 」
本当に、悪くてどうしようか悩んだ末、
あたしは今度ぜひ何かお礼を、と
楓くんの袖を引っ張った。
”え~”と苦笑する彼の袖をぎゅっと
掴んだままで居ると、
「 俺は別に下心があってこういうこと
してるんじゃないですよ。
ただ、菜緒さんだから、そうして
あげたいと思うんですよ 」
”俺、そんな優しくないですし”と
笑って、立ち止まっていたあたしの
手を引っ張り、彼は映画館へ向けて
再度足を進めだした。