Black Coffee.
もう少ししてからでいいかな、と
深呼吸をして、落ち着いて、
あたしの大好きな”特別メニュー”の
置かれた席に視線を向けた。
「 こんにちは、菜緒さん 」
いつもの、あたしの特等席に座る彼女が
振り返って優しく微笑んだ。
特別メニューの、レモネードの入った
グラスを両手で持った彼女は
”いつもお話、聞いてます”と
まるで保護者のような挨拶をして、
「 あたしも本、大好きなんです。
よかったらお話聞かせてください 」
可愛い笑顔を向けられて、隣へと
腰を下ろせば彼が”どうぞ”と
レモネードを出してくれた。