世界で一番大切なもの
「だからそんなキレんなって」



「誰がキレさしてんだよ…」



ため息混じりに俺は言う。



こいつのマイペースさには呆れるよ。



そこが、いいところでもあるんだけど。



今日のところは日が悪い。



「振られた?葵に」



「てんめ…」



気付いたら、グイッと京介の胸ぐらを掴みあげていた。



なのに、京介は顔色一つ変えないまま俺をジッと見ている。



本気で殴ろうと思った。



「殴る?」



そしてこいつは俺が本気で殴れないのを知っている。



スルッと、腕の力を抜く。



はぁーっ、と京介がため息をついたのが分かった。



ため息つきたいのは、こっちだっつーの…。



「……京介のことが好きだって」



「は?」



「葵が、そう言ったんだ」



俺はズルッとその場に座り込んだ。
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