世界で一番大切なもの
「でも、桔平から来たんでしょ?帰国のお知らせ」



「うん」



2週間前、見慣れた達筆な文字で綴られたハガキが届いた。



それに、今日帰国すると書いてあった。



「怒ってないじゃん」



京ちゃんはそう言うけど、あたしはそうは思わない。



行く前、あれだけ約束させられたもん。



月に一回は必ず手紙を出すって。



あたしはそれのどれもを破ったし、



桔平はそのどれも破らなかった。



封筒にいれられていた分は開けていない。



最後の帰国のお知らせのだけ、目に入るように大きく書いてあった。



「なんにせよ、前みたいにはならない、か……」



京ちゃんがポツリと呟く。



そうだよ。



何もかも変わってしまう。



「うん、なるべく会わないようにしようと思ってる」



あたしがそう言うと、京ちゃんは軽いため息をついた。
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