世界で一番大切なもの
「会わないって言ったって同じ学校だし…」



そう。



桔平は同じ学校の特進科に通うことになっている。



「第一、あの桔平が納得するとは思えないけど」



京ちゃんの言葉に苦笑いを零す。



「知らないと思う、桔平は。葵とおばさんの間にそういうやりとりがあったってこと。
あの人が、桔平に言うとは思えない」



京ちゃんは、桔平のお母さんのことが嫌いだ。



昔から、なんかやだ、とは言ってたけど



あのことがあってからは本気で毛嫌いしている。



「ま、葵が決めたんなら、それでいいんだけど」



京ちゃんは、あたしなんかより遥かに大人だ。



クールで、少し突き放すような言い方をする時だってあるけど、



それは全部、あたしのことを心配してくれてるからだって分かってる。



あたしの、一番の親友。



「帰ろ」



京ちゃんが立ち上がって後に続く。



きちんと決めたことだった。



だけど、あたしの心はぐらぐらと揺れていた。
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