世界で一番大切なもの
次の日、学校に行くと、有名人が帰ってきたと大騒ぎだった。



みんな一目桔平を見ようと特進科に詰め寄ってたようで、



まだ一日の途中だというのに、普通科は閑散としていた。



見兼ねた先生たちが、6限を全校集会に差し替えた。



「あいつ1人のために集会まで開くなんて」



バカげてる、と呆れ顔の京ちゃんが言った。



体育館へ流れて行く人の波の中を



あたしも京ちゃんの横で見ながら、重い足を進めていたけど



ゆっくりとその足を止めた。



「葵?」



「京ちゃん…あたし、やっぱり屋上行くね、」



一瞬、京ちゃんは何か言いたげな顔をした。



けどすぐにいつもの表情に戻る。



あたしをジッと見つめると、



「HRまでには戻って来なよ」



とだけ言って自分は体育館へと向かった。



あたしは、しばらくその場に立ち尽くしていたけど、



ひと通り、人がいなくなると



くるっと踵を返し、小走りで屋上へと向かった。
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