猟奇的な美剣士〜沖田総司は座敷わらし?!〜
「………っ あ、あの!
わわわたし、あの、えと、だからっ
…末期癌なんですっ!」
「…………………はっ?!」
あまりの唐突さにビックリしたのか
男は一瞬、ピタリと止まった。
でも、そんなのやっぱりその場凌ぎにしかなんなくて…
「…あっはははは。
キミ、可愛い嘘つくんだね?」
「……ち、違う。 嘘じゃない!
見て、ここ見て!
手術した跡、ほらっ?」
ぐいっ、着ていたTシャツの襟ぐりを引っつかんで下げて見せると
「………っ」
3㎝ほどの赤黒い傷痕に
一瞬、男が吃り
その眉間にシワを寄せる。
…やった、助かった?
に、逃げなきゃ! 今のうちに逃げなきゃっ!
希望の光が見えたように舞い上がったドキドキと
焦りのドキドキ
二つが重なって、もはや心臓が飛び出るなんてもんじゃない。
身体が麻痺したようにガクガク震えて、
…あっ
掴んだ鞄を落としてしまう。
…ドサッ
鞄が床に接地した音。
それが、シンデレラの零時を伝える鐘のように、
わたしの頭の中に、静かに響いた…
しまった…
しまったしまったしまった………